例大祭8戦利品レビュー(下)

というわけで誰得レビュー後半戦であります。
左上から右上、また左下から右下の順です。
レビュー内での呼び方はサークル名は様付け、個人名はさん付けで統一します。ご了承ください。

『ないしょのおやつ』(四ツ星レストランおかん 様)
 東方でカケアミの人といえばまず間違いなく名前が上がるであろうこのサークル様の最新刊。
実は自分が漫画をカケアミで描くようになったきっかけもこちらの本『やくもしんぶん』だったりします。
サークル主幹のいまいさんのブログで山川直人先生の漫画を知り、カケアミという技術を尻、自分も憧れてカケアミで漫画描いて今に至る。
 脱線しました。
 という訳で本作は橙がみつけた戸棚のおやつを近くに居たねこに唆されて自分たちだけで食べてしまおうと画策するストーリー。
相変わらずねこ達が表情豊かで可愛らしいのと、屋根の瓦や雑然とした物置など雰囲気がたまらない。
お話もいつものいまいさん。
サザエさん並の風格ですね。


『虚空に浮かぶ月が満ちる』(Aahun 様)
 良くして頂いているマイピクの3さんの既刊(新作は売り切れでした…)。
昨年買ってはいたものの、諸事情あってきちんと読むことが出来ないまま時が過ぎ、一年経ってようやく手にする事ができました。
 今回いろんな本を買ったり頂いたりしましたが、(他の方には申し訳ないですが)今回例大祭8でナンバーワンはこの本でした。
 自分の一番大事にしている同人誌群の中にモヒカン様の『空には月、瞼に星屑』という本があるのですが、始めてそれを手にとった時の、
「こういうの描きたい!」
を呼び覚まされたような、そんな気持ちでページをめくってました。
 まず表紙をめくって一拍おいた後の紫様がね、すごいんですよ。


ぶーーーわーーーーーーーーーー!!!!


って感じです。
素敵過ぎる。
あと穣子様の絵も大好きです。
新刊買いそこねたのが本当に惜しい……


『RAIN MAKER 3』(雨山電信社 様)
 みんな大好き、RAIN MAKERの第3巻。
このブログ覗いてるような酔狂な方はみんな持ってるだろうと思うのですが、未だ読んだこと無い方は是非読んで欲しいシリーズ。
もう一巻は売り切れてしまっているそうなので、DL販売のサイトに委託されているのを買ってください。
東方抜きにしても、王道SFファンタジーとして十分楽しめます。
この三巻読んでて本当にそう思った。
 勿論媒体は漫画なんですけど、読後感はまるでよく出来た洋画を観てるような感じでした。
その感覚の原因が描き込まれた背景なのか、ストーリーなのか、構図なのか、リズムなのか、分からないけれど。
この辺がスパっと言えないのは一重に勉強不足。
 多分この東方界隈でストーリーモノの漫画の中でも最高峰に位置するシリーズだと思います。
クドいですが、読んだことない人は読んだほうがいいです。
マジで。


『セラギネラ 閑話 -紅色緋想天 上-』(マムドルチァ丘陵 様)
今回の例大祭でも委託とか売り子とかでお世話になったマムドルチァさんところの最新刊。
太歳星君の気配を感じ取った美鈴さんが、フランドールさんを連れて妖怪の山へ乗り込むお話。
今作に限った話ではないけれど、マムさんの小説の凄いところはきっちり弾幕勝負が描けてるところ。
ゲームの肝である弾幕の要素を全く匂わせなくても物語が成立するのが東方というジャンルの凄いところだけれど、却ってそれをしっかり物語に組み込んで鮮やかに書き上げてる事が出来てるのって東方創想話なんかを観てても殆ど無いと思うのです。
勿論いつものゆるーい幻想郷のノリも健在。
もう、全部売れちゃったけどね!
今回店番してて思いましたが、コレ読んで次の機会に購入考えてる人はホント早めに行ったほうがいいです。
身内贔屓とか抜きに、小規模サークルだと思うと痛い目あいます。
しかし次はこれの続編になるとか。
どうしよう紅楼夢とか行けないんですが。


『羽衣果実(フルーツ)』(バナナカレー 様)
マイピクで色々と面倒みてくださってるガルベロスさんが主宰を務めるバナナカレー様の新刊。
今は複数のメンバーで構成されてる漫画サークルって少ないですよね。
【ザ・同人】感アリアリのこのサークルさん。
天子ちゃんに羽衣を貸すよう強請られた衣玖さんのドタバタを描いたガルさんの『羽衣果実』、
輝夜殺人事件(?)に挑むてゐを描いた遼香奈こすもさんの『名探てゐイナバ』、
神奈子と諏訪子の掛け合いを描いたUNOYOさんの『藍色の髪の乙女』に加え、
なんといっても、本書の一番の注目はゲストに東方黒社会でおなじみのたけしばさんが参加してること。
凄い人引っ張ってきたなぁ。


東方トーテムポール(BlackDwarf 様)
独特な絵柄で知られる平野まさのりさんの最新刊。
過去にコピ本として発行されてた短篇『東方分煙運動』、『東方低血糖』に描き下ろしであり表題作でもある『東方トーテムポール』の3本で構成された短篇集になってます。
この人の描くキャラはどれも個性的なんだけれど、特筆したいのは東方低血糖にでてくる優曇華院さん。
あんな渋いうどんげ描ける人は他にいない(断言)。
この方の描く一コマごとのキャラの躍動感が素敵で、なんとか盗みたいなーと思う。


『アトリエ・オリエンタル』(しおきび畑 様)
東方プロジェクトのキャラをアナログ画で描いたもののみを集めたイラスト合同誌。
偶然見つけて、アナログコンプレックスの克服に何か役立つんじゃないかとすがる思いで即購入した本書。
本との出会いは一期一会という意味ではこの本が今回そのご縁は一番強いかもしれません。
アナログという縛りになるとやはりそれなり以上の絵描きさんがあつまっており、また一冊の中の幅が大きくていい買い物しました。
どの人がどんな画材を使ったのかが記してあるので、そっち方面の知識が皆無な自分にとっては非常に参考になりました。
がっつりとアナログを描くつもりはそんなに無いけれど、素材としてこれつかってみたいなーってのを幾つか見つけられたので、活かしていきたいですね。


『L■AMIA』(HORN★CHAMELEON 様)
いつもお世話になっているHCさんの新作画集。
………画集?
最初これを初めて手にしたときの第一印象は「なんだろうコレは」でした。
黒と金の鮮やかな表紙を一枚めくると、その先には延々と闇・闇・闇・闇……
どういう本なのか大体事前に伺ってたのである程度予想はしてたものの、
「そうは言ってもこれっきりって事はないだろう」
と思ってたのですが、本当にどこまでも闇・闇・闇・闇……
ああそうだこの人はこういう人だ、と再確認。
そんな本書ですが、ある意味ではこうして実際に本にして発行することに他の何よりも意味がある本なのかもしれない。
それは、『デジタルでの発表じゃできない』表現だと思ったから。
延々と一枚一枚の繊維や所々にある白い粒に目をやったりページをめくり続けて得られるこのモヤモヤとした感じはなんだろう。
東方Projectに出てくるルーミアの画集』を期待した人にはガッカリさせる本だと思うけれど、『ざわざわさせてくれる何か』を探している人には価値があるかと。
あと、こういう訳の分からない物への対応ってそのままその人の心を映す鏡だったりすると自分は思っている。
『これは何だろう?』に対して『何だと思う?』と問いかけ返してくる。
例えば音楽なんかでは何遍も聴けばその傾向とか流れが分かって何らかの理解が進むもんだけれど、多分この本はそうは行かない。

何度か読み返してるうちに一番最後のページの糊が剥がれてしまった。
あーあ。


『向東流』(賽 様)
 今回事前にリストアップした中で一番楽しみにしていた一冊。
賽さんの描く幻想郷は東方projectに登場するキャラのデザインではなく、そのキャラの設定やモチーフ等の背景が色濃く反映されていて、とても素敵。
こういう言い方は適切なのか分からないけれど、二次創作という枠で括るのが失礼な位東方以外の要素も絡み合って昇華された賽さんの世界が広がってる。
 これがある意味最も健全な創作の連鎖なんだろうなぁ、と思う。
それこそZUNが色んなものから刺激を受けて東方Projectを作ったのと同じ流れがあるような気がする。
 『海神別荘』と『風月同天』が特に好きです。


『悪魔の手触り』(腑抜け 様)
 今回自分の本の価格を決めるとき、結構悩んだんです。
ヘタクソなりに色んなもの削って作った本だったので、100円位なら取っても罰は当たらないんじゃないかと。
でも腑抜けさんもコピ本出すっていう話を既に聞いていて、それほど枚数があるわけじゃ無さそうだったので多分この本も100円だろうなーと思ったときにおんなじ価値は無いだろうな、と思って無料頒布にした、というどーでもいい裏話があります。
 と、いきなり脱線しましたが、本題。
 腑抜けさんらしさ満点のモノクロ聖白蓮画集です。
 一枚絵としては『基本姿勢』が好きですが、『極限の際』の発想にももの凄く惹かれます。
 一冊通して、スマートで、余裕綽々なオーラが漂ってます。
 あれは真似しようと思っても真似できないだろうな……



 今回いろんな方の絵や漫画を拝見してて思ったのは、自分が如何に洗練されてないかってことでした。
もっとも、そういう意識が無いままにこれまで描いてきたのだから当然といえば当然ではあるのですが。
 今までは手数を増やすやり方をしてきましたが、これからは如何にして手数を減らして、少ない時間・少ない量でしたい表現にまで行き着かせるかという事も考えてやっていこうとおもいます。
 自分もいずれはこのレビュー上下で紹介した本に並んでも遜色ないような本が作りたいし、その為には一から構図について勉強が必要だし、模写もたくさんしなきゃいけないし、そしてなにより本を作り続けなくちゃいけない。
その為には技術だけじゃなく、発想の引き出しももっと広く深く持っておきたい。


うわーやること沢山ある。
気付かなかったら全然着手できてなかった。
例大祭行って良かった。